Dreamland-夢と想いと小さな工夫

自分の中にある想いだったり日々の工夫だったりをすこしずつ書いていこうかなぁって思ってます。

勉強している様がみられないひとは勉強したくないのか?

ソフトウェアテストのコミュニティの中で会話をしていると、現場でテスト設計やテスト実行をしている人たちが進んで勉強をしない、社内で勉強会を開いても参加しようとしない、という話をたびたび耳にします。私も現場で体験してきているし、そういう話をします。少なくともそういう事実はあります。

以前JaSSTでにしさんがソフトウェアテストの人材育成トライアングルという話をしました。
http://www.jasst.jp/symposium/jasst14tokyo/pdf/H8-6.pdf
この最下層「Novice層」に位置する人たちを対象にした話です。

勉強しないよね、という話があがるときに、なぜそうなるのか?という問いをすると、「成長する気がない」「言われたことをやることを望む」という意見がでてきます。
確かに作業を望む人や勉強してまで時給を上げたいわけではない人はいます。これも事実。
ただ、どうもそのような人にフォーカスがあたりやすく、そうではない人までそのような目で見られてしまっていることに最近気づきました。Novice層にいる人達をひとまとめに扱ってはいけない!と。
私もバイアスをかけてひとまとめに見てしまうことがあります。だけどそれは本当ではない。存在の懸念があるわけです。

Novice層の中に様々なタイプの人がいるのですが、ものすごくざっくり分けると、4つかなぁと思っています。

  • 決められた作業をやりたい人(そもそもソフトウェアテストには向かない人)
  • 現状に満足していてなにも変えたくない人(ソフトウェアテストに向いているかもしれないけれど勉強や成長は望まない人)
  • 現状を変えたい(勉強したいし成長したい)のだけれど自分の時間も大事にしたい人
  • お金や時間が無いなどの制約に阻まれてどうしたらよいのかわからないでいる人(制約が取れれば社外で勉強することにも抵抗が無い人)

上2つに該当する人たちになにかを働きかけても効果は無いなぁ、と思っていますし、ソフトウェアテストの仕事をするうえで雇うのはどうかなぁと思います。
だけどNovice層の多くは実は下の2つのどちらかに該当していると私は考えています。

働く人のすべてが働く時間以外に勉強する時間を設けられるかといったらそれは難しいことで、子育てをしていたり介護をしていたり疲れやすい体質だったり他にやりたいことがあったり・・・様々な背景を持っている。勉強する時間を持てない人は勉強したくないのかというとそんなことはない。
だけど自身がたまたま勉強する時間を持てて、勉強することの価値を感じている人は、自分の周囲を基準にするから、単に「勉強したくないんでしょ」という一言で片付けてしまう。それは誰にとっても嬉しくないことなのにね・・・

そう、違うんだよ。勉強したいって声は実は多くの人から発せられている。でも自分のライフスタイルの中では業務時間の中で勉強できることが理想なだけなんだよ。現状維持したいわけじゃない。給料は上げたいし成長できたら嬉しいとも思っている。そんな人はひょんなきっかけで成長する可能性を持っている。本当になにも成長せずにただ現状維持できて考えずに仕事ができたらいいって思っている人は、実はごくわずかなんだと思う。

そしてすべてのひとが同じように勉強すれば成長するわけではない。ひとりひとり、理解するために必要なアプローチが異なっている。さらに、そもそも受けてきた教育が一方的に与えられたもので、暗記したり言われたことをやったりという学び方をしてきているのだから、そういう人たちを相手に画一的な勉強会を開いても、言われたようにやることだけにとどまるからそれをどう活用したらよいのかまで考えられない。そもそも理解に達しない。疲れちゃう。理解できないことが辛くて続けられない。

従って、どれだけひとりひとりに寄り添えるか、一緒に考えて進めるか、それが課題になっています。

しかしながら、現実的にひとりひとりのケアは難しい。そして自社の後輩ではなくて委託先ともなればコンプライアンスが立ちはだかってなおさら手が出せない。それを踏まえてなおも手を出したところで、相手の立場からすると別の現場に行かされたらその時点ですべてリセットされる・・・周りの環境も、自分の報酬も。だって多くの現場はテスト設計技術なんてスキル評価の対象になっていないのだから(単にテスト設計の経験年月しか問わないのだから)、学んだ内容がステップアップに繋がる可能性は極めて少ない。
さすがにテスト自動化技術に関しては着目されているけれど、実際に現場でなにもない状態から自動化の学習ができることはほとんどない。やってもテスト設計技術に比べたらさらに学習時間を要して結局身につかない中途半端な状態で終わることのほうが多い。次の現場で引き続き学べるかどうかは運次第。だって送り込む側は送り出す人の成長よりも遊休期間をつくらないことを重視するか送り出す人の成長なんてどうでもいいかのどっちかになることが多いから。

・・・こんな現状は変えたい。ひとりの力ではどうにもならないことだけど、地道にどうにかしようと現場で奮闘している育成者はいるのです。そして社外で名の知れた実力ある人達からみたら「はぁ?!なにそれ?それで勉強しているって言えるの?」って言いたくなるくらいほんの少しだとしても、学ぶ側は現場で少しずつ学び成長しているのです。ものすごくゆっくりしたペースでしか進めない彼らにトップの世界を見せても通じない。遠すぎて目指せない。過去底辺にいたひとが自力で抜け出した実績があったとしてもその人と同じになんかできない。そうじゃない。ひとりひとりにそれぞれ異なる嬉しい変化の可能性をみせたい。小さくていいんだ。

そのために今やらなきゃいけないのは、ひとりひとりの学習効率を高めること。学生のときの学習方法とは異なる学習方法を知ってもらい得させること。考えることの楽しさと大切さを実感してもらうこと。自分で決めて自律的に動けるように考えられること。

私もこれまで全然うまくできなかった。なんで?なんで勉強しようと思わないの?なんで楽しいと思わないの?私だってみんなとスタートラインは同じだったんだよ?無知なところから必死に学んだんだよ?・・・って周りを責めたし馬鹿にした。でもそれ、なんにも嬉しくない。そしてよーくよーく観ていたらそうじゃなかった。いろんな背景があった。諦めていることとかもあることがわかった。様々なアプローチを試さないとだめなこともわかった。
この先機会を得られるかどうかはわからないけれど、機会が得られたならこれまでより上手くアプローチできるようにしたいなぁ、と思っています。